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同じ脱毛症の人たちのために起業。隠したかったコンプレックスも「人のために使えば強みになるし役に立つ」

コンプレックスをいつも抱えて後ろ向きになってしまう……。誰もがそんな悩みをひとつは持っているかもしれません。今回は、見た目のコンプレックスで一度は引け目を感じながらも、〝それが私の個性〟と受けとめて、世界を広げた方々を紹介します。

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「つらい環境で生きていく悲しみや喜びを、子どもや親御さんと共に感じていくことが私の使命」


角田真住さん 合同会社Armonia代表
45歳・群馬県伊勢崎市在住

「髪の毛がない」がコンプレックスの角田さん。

同じ脱毛症の人たちのために
ヘッドスカーフのブランドを起業

「多発性円形脱毛症」を2人目の娘を出産した36歳で発症した角田真住さん。髪は半年で3分の1程に。「見たことがない落ち武者のような風貌になり、外出する気も失われて自分が壊れていく感覚でした」。

落ち込む角田さんにさらに追い打ちをかけたのは、「栄養のせいでは」と自らを責める両親の姿でした。「私の外見が周りの人々をこんなに悲しませてしまうのかと、戸惑いとやるせなさを感じました」。

肌が弱いためウイッグは地肌に血が滲むことも。「バレないか、自然に見えるかを考えてばかり。気づけば、子どもと公園に行っても暑くて早く帰りたいと楽しめていなかった自分がいたのです」。

「これってどうなの」と思った角田さんは、「せめて子どもと遊ぶ時は気を取られたくない」と、外国の脱毛症の方のブログを見て素敵と思った姿を真似してみることに。「頭にスカーフを巻いて出かけると、快適なうえに『かわいい!』と友人たちから思わぬ反響が。うれしくて、このスカーフが似合う服を買いに行こうと、一気に遠ざかっていたファッションの喜びを思い出しました」。

その時に友人からかけられた「スカーフを使って180度明るい気持ちに変わったことは同じ病気の人の希望になるよ」という言葉。「隠したかったコンプレックスが、『人のために使えば強みになるし役に立つ』。そう思うと、気持ちが高まり手が震えました」。

カードゲームのジョーカーを手に入れたようだったと振り返る角田さん。「どう使うべきか」とすぐにビジネススクールに通いました。発症から2年後には、ヘッドスカーフが誕生。群馬県の碓氷製糸組合で作られる世界で唯一ホルマリンを使用していない安心なシルクを裏地に使用しています。

「自分は髪でしたが、人との違いは誰でも何かしら持っていると思います。会社名の「Armonia」はイタリア語で「調和」。みんな一緒が良いのではなく、違いを認め合い調和し合える。そんな社会になってほしいです」。

  • 色鮮やかなヘッドスカーフは、被るとお客様の目の輝きが変わるそう。
  • 同じ悩みを抱える人たちと気持ちを分かち合うイベントも。
  • 店舗のミシンで1枚1枚製作。
  • 発症前。
  • スカーフを巻き始めた頃。
  • 「娘は髪のない人に抵抗がないので、髪のないプリンセスも当たり前に描きます。コンプレックスは大人が作り出しているのかも」

ストレスなく使えるよう簡単に着脱できる形にこだわりが。「ヘアゴムを結ぶように、パッとつけられるのが特徴です」(角田さん)

<編集後記>コンプレックスをジョーカーにたとえる強い姿が魅力的 取材日の前橋は35度。そんな猛暑日にヘッドスカーフを被せていただき、裏地のシルクが涼しくて快適なつけ心地を実感。コンプレックスをジョーカーにたとえ、持ったことで嘆いて生きるか、切り札として役立たせるか。そんな話をする角田さんの笑顔が本当に輝いて、ヘッドスカーフがお似合いで。人としても魅力がいっぱいでした(ライター 孫 理奈)

撮影/BOCO 取材/孫 理奈 ※情報は2023年8月号掲載時のものです。

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