「一家の大黒柱」と聞くと男性を思い浮かべるのは一昔前。今は、時と場合によって「大黒柱」が変わる時代です。男女関係なく一家を支えていくことは大変なこと。仕事と家事、育児の両立に悩みながら、パートナーと共に支え合い、それぞれの幸せの形や新しい家族の在り方を見つけた方々をご紹介します。
中村朱美さん 39歳・京都府在住
㈱minitts代表取締役 京都「佰食屋」経営
プロポーズも私から。
〝男だから〟〝女だから〟なんてことは
ひとつもありません
〝男だから〟〝女だから〟なんてことは
ひとつもありません
13歳年上のご主人の中村剛之さんの夢は、「定年後に飲食店を始めること」。その夢を応援したいと前倒しで叶え、妻の朱美さんは「佰食屋」を始めました。出会った当時は2人とも会社員。ご主人は不動産関係の仕事をしていて、建築士になるために夜は学校に通っていました。
「試験に合格したらプロポーズをしてくれると思ったけれど、私が勉強の邪魔をして不合格に。合格するまでプロポーズはしてくれないだろうと思い、『これからは妻として支えたいから結婚してくれませんか』と私からプロポーズをしました」。
結婚後に朱美さんは会社を設立。ご主人も退職後に合流して、2人の子どもを授かりました。「夫は料理上手で、佰食屋のステーキ丼も、元々は夫の得意メニューでした。子どもが生まれてからは完全に役割分担し、私が家でキッチンに立つことはありません。反対に夫は掃除が苦手で、私は得意。仕事が忙しくてストレスが溜まっても、きれいに掃除をすることで心が整うんです」。
コロナ前まではご主人も不動産関係を担当していましたが、コロナで朱美さんの仕事がさらに多忙に。ちょうどお子さんが小学校に入学する時期でもあり、朱美さんから現在のスタイルを提案しました。「私の希望で申し訳ないけれど、今は仕事を思い切りしたいから、専業主夫になってくれませんか?」。剛之さんは、子どもの成長のタイミングなどを考えて、自分がやるべきだと思ったそう。
「『じゃあ仕事はよろしく。こっちはやっておくわ』と引き受けましたが、学童に忘れ物をしないようにと考えすぎて、夢でうなされて目が覚めることもありました(笑)」(剛之さん)。
今年からはPTAの副会長にもなり、掃除と洗濯以外の家事はご主人が担当しています。「夫がいないと子どもが食事の心配をしますが、そんな時は外食かテイクアウトで。かたや洗濯と掃除はもっぱら私の担当。互いにリスペクトしながら任せ合っています。口出しをせず、関与しないこと。それは2人のルールですね。苦手なことは人に任せて得意を伸ばすのが私たちのスタイル。苦手なことに挑戦しなくていい分、仕事に全力投球できますよね。結婚したいという気持ちは私のほうが強かったのでプロポーズもしたし、男だから女だからなんてことはひとつもない。自分たちが心地いいのがいちばんですよね」。
「僕はお金にそんなに興味がなく、仕事が忙しくて2人の時間が持てないぐらいなら今までどおりでいいと思っています。ストレスが溜まって仲が悪くなるのは本末転倒。このスタイルは一生続くと思うし、続けたいですね」(剛之さん)。
撮影/前川政明 取材/孫 理奈 ※情報は2023年9月号掲載時のものです。