“バラードの皇帝”の異名を持つ、韓国を代表するシンガー・ソングライター「ソン・シギョン」。日本ニューアルバム『こんなに君を』リリースを記念し、20年ものあいだ歌手活動を続けてきたソンさんに、これまでの活動を振り返って、抱えてきた思いをお伺いしました。

「僕が一番難しいと思っていることは「作文」です。自分が書いた歌詞に責任を持たないといけないから。そして聴き手にメッセージを伝えることは本当に難しい。例えば、歌詞から僕が風を思い描いて歌おうと思っても、聴いている側にあれは太陽だって思わせてしまうこともある。対して、メロディー作りに関しては肩の力を抜いて自由になれる気がします。自分の気持ちに集中して、その時の気分で作るタイプです」

「そのフレーズの続きは歌詞に入れました。こんなに頑張っているのに、どうしても君を忘れられなくて君のために曲を書いているよ、って。僕はここに出てくるソン・シギョンを演じるただの役者なので。彼が伝えたいメッセージは全部歌詞に出ているので、そこも含めて聞いてくれると嬉しいです」

「僕は計画を立てて地道に進んでいくタイプではないんです。どちらかというと目の前のことに集中するタイプ。この20年間は、ただただ歌手を続けてきました。これからどれだけ続けられるかなんて考えたことがない。でも歌手をやってきてよかったなって思いますし、もう一度人生をやり直す機会があっても歌手という道を選ぶと思います。無理かもしれないし、その時考えていることなんて分からない。人の考えは簡単に変わっていくから。でも僕は歌が好きなので、歌いたいと思います」

「やっぱり健康ですね、一番ありきたりでつまらない回答ですけど。僕の歳だと健全な体を失うと何もできなくなってしまうので。若いときは何をせずともいつでも元気でしたから。人間って失い始めてから気づくんですよ、この年になってつくづく思います。もう年をとってしまったら絶対に若返らないから。だから失っていく中で、できるだけなくさないようにうまくやっていくことは大切だと思います。

あと、もう一つ大切だと思うのは『諦める』こと。僕が一番嫌いなのは、年齢に逆らって無理をしたり、しがみついて潔く諦められないことなんです。自分ができることを頑張るのはもちろんいいことですが、諦めてから見えてくる新しい気づきもあるんです。悔しいけど、もう青春はそこにないんです。手放してから、初めて見えてくる世界があると僕は思います」

「先ほど話した通り、僕は未来のことを深く考えるタイプじゃないんです。でも、やっぱり歌を歌いたいなと思います。特に日本の活動に力を入れたいです。日本のみんなに自分の歌を好きになってもらって、大きいイベントがしたいですね。自分が歌いたい曲ばかり歌っていたらだめだなと思います。自分が好きな曲とみんなに受け入れてもらえる曲は違うんですよ。でも僕は刺激的な歌が歌いたいですね。喉から血が出るくらいの（笑）」

「僕は日本ではまだ新人です。大きなイベントをやったこともないし、これと言って有名でもない。その中でも僕を応援してくれる日本のファンのみんなはすごく特別な存在です。本当にありがとうございます。コロナ渦で、ここ最近は何も大きな活動ができてなかったので、もっと頑張りたいなと思います。恩返しというか、今までファンの方にもらった気持ちを今度は僕が返せるように、これからイベントにも力を入れていく予定なので、楽しんもらえると嬉しいです。ありがとう」

取材/ 滝口真実