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作家・凪良ゆうさん 更年期の症状で書けない日々も「50代、仕事を阻むのは、自身のカラダでした」

『流浪の月』、『汝、星のごとく』と、40代で2回の本屋大賞を受賞した凪良ゆうさん。
様々な年代の“結婚しない男女”を描く新著『多類婚姻譚』は、
先日発表された、2026年の直木賞にノミネートされ話題に。
凪良さんご自身が、結婚、そして離婚を経験する中で、ずっと抱えていたモヤモヤとした
気持ちを整理・収納するために書いた作品だと言います。
そんな凪良さんに、30代半ばでデビューし、“作家”として築いてきた50代の今の景色、
そして、ご自身の結婚観、恋にいたるまでお聞きしました!

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★ 50代の幕開け、重い「更年期障害」のせいでバリバリと書けなくなった
★ 恋せよ、大人女性たち。いくつになっても、恋は人生を楽しくする!

50代の幕開け、重い「更年期障害」のせいでバリバリと書けなくなった

40歳で離婚をして以降、この10数年がむしゃらに働いて築いてきた“作家”という場所――、
50代の今、そこは私にとって“素敵な庭”です。
ちょっとずつ、ちょっとずつ自分の意志で作ってきた場所だから、
デザインも気に入っていますし、今、とても満足しています。
けれど問題の多い家庭で育ってきたおかげか、「人生、何があるかわからない」ということも、
心身に叩き込まれています。
だから、「いつ庭の花が、全部枯れてしまうかわからない」という危機感は
常にあって、そのための備えもしっかりしておきたいですね。

そして、豊かな気持ちで迎えた50代を最も阻んだのが、自身のカラダでした。
40代の終わりくらいからその兆候はあったのですが、50代に入るとすぐに
重い更年期障害がズシンと心とカラダにのしかかるようになりました。
やっと経済力も安定し、「好きなように頑張るぞ!」と1番自由な時代が得られた50代の入口、
それをことごとく邪魔してくるのが“女のカラダ”でした。
バリバリ書けていたのが嘘のように全く書けなくなり、だんだんと執筆量も落ちてきて、
かなり仕事にも影響が出ています。
本当に集中力が続かず、今回の本も2年半ぶりの出版となります。
もちろんのこと体調は悪いし、すぐイライラするし、決断力もなくなるし、
「勘弁して!」という季節が50代の幕開けでした。
年齢を重ねた50代、経済力や意志は自身でどうとでもなるけれど、
カラダにだけは裏切られてしまうんです。
これから50代を迎える皆さんも、まず一番に自分の体と向き合う季節が始まるかもしれません。

私の場合は、「どうしてこんなことになるの?」と戸惑うばかりでした。
離婚して10年以上が過ぎ、独身気分で好きな仕事をしてふわふわ生きていたから、
自分が更年期障害を起こす年齢だということを忘れていたんです。
だから、最初は「私、深刻な病気なのかしら……?」「何だか、変!」という状態が、
何ヶ月も続き、「これは、もしや更年期障害?」とやっと気づいて。
それで、病院に行き治療を始めました。
新著『多類婚姻譚』5人めの主人公、47歳のフレンチシェフ・祥子が、
物語の中で“ホルモン補充療法”をしているのですが、あれは自分自身の経験です。
薬をやめてしまうと、メンタルも体もバーンと落ちてしまうので、
とてもじゃないけれど、日常生活が送れなくなってしまいます。
もう、治療は必須で、今はそれと向き合う季節です。

「更年期障害」って、未だに口に出しづらい病気。
男性が耳にすると、どこか“おばさんになった証拠”と受け止められがちですし、
結婚している人は、夫に理解してもらうのにも時間がかかります。
それに、恋人だったらなおさら「“女性”であることを失いつつある」自身のカラダのことを
告白するのは、キツイものがあります。
「ずっと、女でいたい――」それは、結婚している、していないに関わらず思うことですから。

恋せよ、大人女性たち。いくつになっても、恋は人生を楽しくする!

同性代の友人たちは、もちろん結婚している人もいますが、結婚していない人も案外多いんです。
そして、結婚していようがしていまいが、皆口を揃えて「恋はしたいよね」と言います。
先日、既婚の友人が「恋がしたい」というので、「旦那さんと恋はしないの?」と
聞いたら、「は?」とすごくいやな表情をされました(笑)。

だからといって旦那さんのことが嫌いなわけではなく、子どもを挟んで、今や仲間、家族というチーム。
だから、「恋」とは違うんでしょうね。
でも男女を逆にして、自分が旦那さんから同じことを言われたら寂しい気持ちにもなる。
人は勝手な生き物です(笑)。

私自身、ずっと恋はしていたい。
結婚をする、しないに関わらず、大人も恋はどんどんすればいいと思います。
だって、楽しいじゃないですか。
しんどいことも多々あると思うのですが、好きな人とデートって単純に楽しい。
先日、先輩作家の林真理子さんと対談させていただいた際に、
「出会い系アプリに登録すればいいじゃない!」と背中を押されました。
今は、アプリでの出会いも多くあるようですが、私はそこらへんが古くて。
これまで一度もアプリに登録したこともないんです。
一度チャレンジしようと思い、試みたこともあったのですが、
「あれ? 写真を載せなくちゃいけないの?」と気が付いて。
顔バレしている私は、「あの作家の人、なんか婚活していますよ」って言われちゃいそうだなって。
「あんな小説を書いているけれど、結婚したいのね」なんて……(笑)。
でも、最近では、読書好きという同じ趣味の人同士でマッチングする「ブック婚活」なんていうものも
あるらしいから、話が合う人が見つかるかもしれませんね(笑)。

そして、恋をした先に、「結婚したい――」そんなふうに思える人が出てきたら、
また結婚するかもしれません。
とはいえ、単純に“結婚”って、ちょっと面倒くさいところもあるんですよね。

離婚を経験した際、「離婚って、こんなに面倒くさいんだ」と思ったんです。
手続きも面倒ですし、私はフリーランスなので、
「すみません、苗字が変わって銀行口座や住所の変更を……」なんて、
全ての会社に一社一社説明しなきゃいけません。
細々とした手続きの変更が本当に多くて、もしまた結婚して添い遂げられたらいいのですが、
また離婚とでもなったら、「70歳になって、またあんな面倒な手続きを?」と腰が引けてしまいます。
財産分与なんかも面倒そうだから、「事実婚がいいかな」と思ってみたり(笑)。

結婚しない男女の小説を書いておいて何ですが、
それでも、「幸せな結婚」だったら、やっぱりもう一度したいな、と思います(笑)。

YUU NAGIRA 京都市在住。2007年に初著書が刊行され本格的にデビュー。BLジャンルでの代表作に連続TVドラマ化や映画化された「美しい彼」シリーズなど多数。17年に『神さまのビオトープ』(講談社タイガ)を刊行し高い支持を得る。19年に『流浪の月』と『わたしの美しい庭』を刊行。20年『流浪の月』で本屋大賞を受賞。同作は22年5月に実写映画が公開された。20年刊行の『滅びの前のシャングリラ』で2年連続本屋大賞ノミネート。22年に刊行した『汝、星のごとく』は、第168回直木賞候補、第44回吉川英治文学新人賞候補、2022王様のブランチBOOK大賞、キノベス!2023第1位、第10回高校生直木賞、そして23年、2度目となる本屋大賞受賞作となった。その続編『星を編む』も本屋大賞にノミネート。

『多類婚姻譚』
一緒に生きる。わかりあえないあなたと。
一番近くにいる他人-こいびと-。どうして結婚はこんなに難しくなってしまったのだろう。
『流浪の月』『汝、星のごとく』で二度の本屋大賞を受賞した著者が描く、今そこにある愛のかたち。
セクシュアリティ/ジェンダー、金銭感覚、世代間格差、成育環境……
あらゆる価値観の対立の中で現代を生きるわたしたちの祈りと叫び。
発売即大重版にて、早くも12万部突破!
¥2,090(税込)<講談社>

撮影/田頭拓人 取材・構成/河合由樹

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