街が煌びやかに彩られるこの季節に、素直に心を躍らせるようになったのは、実は40歳を過ぎてからかもしれない。もっと若い頃は、クリスマスという年末最大イベントをどう過ごすかが自分自身の評価に繫がるような気がして、恋人やプレゼント、パーティドレスに素敵なレストラン……なんかを、まるで舞台の小道具を集めるように必死になっていた。

今思えば、武装のようなものだ。自分で選んだ道なのに、独身を貫き、子どももいない引け目に、クリスマスが近づくたびチクチク胸を刺激されていた。

でも。ここ10年くらいで、社会はずいぶん変化した。女性の生き方は自由になり、選択肢も増えたと思う。同時に、私の心の強張りみたいなものはだんだん柔らかくなったし、他人の目を気にして武装用の小道具をあれこれ集めるよりも、自分自身が強くなればすべて解決することを知った。

そして今、クリスマス当日に、若いカップルで溢れる六本木ヒルズのけやき坂を穏やかな気分で歩けているということは、私はたぶん、うまいこと成長できたのだ。ひと昔前なら、おしゃれなイルミネーションの下をひとり仕事着で歩くなんて、きっと敗北者のような気持ちになったはずだから。

イルミネーションを少し楽しんだら、スーパーに寄って帰ろう。Netflixでドロドロの韓国ドラマを見放題なクリスマスも贅沢だ。そんな妄想中、ティファニーの路面店を通りかかった。

そういえば、ドラマの中でゴージャスな韓国女優がティファニーのジュエリーを身に着けていたことを思い出す。男性に劣らない強さと、現実離れした美しさを併せ持つ彼女たちには毎度見惚れてしまう。クリスマスムードがさらに増す店内でジュエリーを鑑賞していると、最近人気のロックシリーズの前で足が止まった。なめらかなシルエットが優美な、伝統的なデザイン。ダイヤモンドがあしらわれたペンダントが強い存在感を放っている。

周囲にはやはりカップルの姿が目立ったけれど、ふと、私も愛し合う恋人たちと同じく、自分自身を愛せるようになった証しに、自分へプレゼントを贈りたい気持ちが湧いた。最愛のパートナーのように、自分を信頼し頼れる存在になったこと。それはたぶん、40代の私の一番の誇りだから。

赤いリボンでラッピングされたジュエリーを片手に家路につくと、スマホが鳴った。

『せっかく料理もクリスマスケーキも用意したのに、娘に“友達と遊ぶ”ってすっぽかされて！　お暇な人いる？　うちでパーティしない？』長年の女友達からのグループLINEの通知だった。

『シャンパン買って、30分で行く！』即返信すると、他の女友達からも続々と前向きなLINEが届く。

20代、30代では結婚や出産などのライフスタイルの違いで分断されざるを得なかった友情も、40代では様々なものが落ち着き、再び女同士で集まれるようになった。良い意味で、ある程度土俵を降りた女たちはとても楽になったと思う。

貴重なプレゼントが降ってきたことを、どこかにいるに違いないサンタクロースに感謝した。