40代の時に脳出血で意識を失い、22年間寝たきりになっていた母が、ある日何の前触れもなく甦り……。圧倒的な表現力と存在感で活躍し続ける大竹しのぶさんが、そんな新作舞台に出演します。タイトルは『果てない~甦る母篇~』。作・演出は、矛盾を抱えた人間や社会のありようをユーモアを織り交ぜながら鋭く描き出す蓬莱竜太さんです。笑顔がたまらなくチャーミングな大竹さんに、初顔合わせへの期待感、普段の生活や年を重ねることについて伺いました。
★ 芝居であっても歌であっても、大切なのは言葉を伝えること
★ 寂しくはないけれど、“誰かのために何かをする”ほうがやる気が出ます
いきなり40代から60代へ、22年間のギャップが面白い
――大竹さんが22年間の寝たきり生活から突然目覚める母を演じるという『果てない~甦る母篇~』。どういった物語なのでしょう?
台本がまだ最後まで出来上がっていないので(取材時)、私が演じる母がどういう人物で、どういう人生になっていくのかというのは、まだちょっとわからないところもあって……。ただ、家族の話にはなっています。長女の役が江口のりこさん、次女の役が伊藤沙莉さん、夫役は(高橋)克実さんです。
――目覚めたら22年経っていたなんて、母は浦島太郎のような状態なのでしょうね。
そうですね。40代で倒れたので、自分の意識としては40代のままなのに、娘たちはすっかり大人になってしまっているし、夫は「その頭、どうしちゃったの!?」っていうような風貌になっていて(笑)。当然、自分の体も60代になっているんですよね。精神年齢は40代で止まっているのに。あらすじを聞いた時に、その22年のギャップがとても面白いなと思いました。タイトルの“果てない”は一体どういうことを意味しているんだろう? とか“甦る母篇”としたのはどうしてなのかな? とか、いろいろ想像しています。
――オールキャスト6名が並んで座る宣伝ビジュアルが素敵です。
楽しく撮影できました。江口さん、伊藤さん、名村(辰)さんと共演するのは、私は今回が初めてなんですけれども、緊張し合うようなものでもないし、克実さんがボケで、私が突っ込みで、それをみんなが笑う……というような感じでした(笑)。東京公演の劇場はシアタートラム(キャパ220人程度)で、私はたぶん今回初めて出演するんですね。そんな小空間でこの6人でお芝居をするというのも、楽しみにしているところです。
芝居であっても歌であっても、大切なのは言葉を伝えること
――今年はすでに『ピアフ』、Musical『GYPSY』、大竹しのぶLIVE×ACT『NA・NI・MO・NO』と3つの舞台作品に出演なさっている大竹さん。お仕事を選ばれる際のポイントを教えてください。
いちばんは、やっぱり「面白そうだな」「やってみたいな」と興味が湧くことですね。演出家に惹かれることもありますけれども、台本を読んで決めることが多いので、今回のようにオリジナルの作品で、しかもまだ台本がないものに出るのは、久しぶりかもしれません。あ、でも『NA・NI・MO・NO』も台本がありませんでした。
――広々としたアクティングエリアを自在に使った、歌と演技で魅せるひとり舞台『NA・NI・MO・NO』、素晴らしかったです。歌の合間に話されていた子どもの頃のことや、クリスチャンだったお祖父様やご両親の話は、大竹さんのフリートークだったのですね。
最初に何を歌うかを決めていって、その合間にトークを入れる形にして。話す内容については、本番の前の日に自分で「こんな感じのことを話そうかな」とざっくり考えて、自由にしゃべっていました。プロデューサーの北村(明子)さんのアイデアで、広々としたアクティングエリアをお客さんが取り囲むように席が配置されていたので、自由に動き回りながらお客さんともコミュニケーションがとれて楽しかったですね。アクティングエリアを挟んだ向こう側に座っている人たちの顔が見えるから、お客さんもちょっと緊張していたり、一緒に笑ったり……。そんな会場の雰囲気もとても面白かったです。
――大竹さんの歌を聴いていると、歌詞のイメージが鮮明に頭に浮かんできます。
そうだとしたら嬉しいです。芝居であっても歌であっても、自分がそこに臨む時の心持ちはそんなに変わらないんです。言葉を伝えるということが俳優の仕事なので、自分でライブをやる時も、詞の意味をよく考えて歌を選ぶようにしています。
寂しくはないけれど、“誰かのために何かをする”ほうがやる気が出ます
――長男の二千翔さんが一昨年ご結婚、長女のIMALUさんはパートナーの方と奄美大島にお住まいとのこと。お子さんたちが独立なさって以降、普段どんなふうに過ごされていますか?
娘は仕事でたまに東京に帰ってくるので、その時に一緒にご飯を食べますし、息子夫婦は近くに住んでいるんですね。なので、「○○作ったから食べに来る?」って連絡すると、「食べる」と言って家に来たりして、一緒にご飯を食べることは結構あります。ただ、私も仕事で出かけていることが多いので、息子夫婦に今年子どもが生まれたんですけれども、なかなか世話をしてあげられなくて、そこはちょっと悪いなと思っています。
――では、いわゆる“空の巣症候群”のようなことは?
寂しいと思うことはないですね。私は家で過ごすのがわりと好きで、ひとりの時間をゆっくり楽しんでいます。量が減った分、だいぶ楽にはなりましたけど、自分のご飯を作ったり、洗濯したりといった家事自体がなくなったわけではないですし。ただ家事をする時に、つまらないな、張り合いがないなと思うことはあります。やっぱり“誰かのために何かをする”ほうがやる気も出るし、実際きちんとやりますよね(笑)。自分ひとりだと、ご飯を作る時もつい「なんでもいいかな」と適当になりがちなので、それじゃいけないなと思って、朝もなるべくきちんと、お味噌汁やちょっとしたおかずを作るように心がけています。
【公演情報】
シス・カンパニー公演『果てない ~甦る母篇~』
22年前に脳出血で寝たきりになった母(大竹しのぶ)を、自宅介護してきた夫(高橋克実)と長女(江口のりこ)と次女(伊藤沙莉)。そこに介護士(井上芳雄)と家族の一員になったケンシロウ(名村辰)も加わり、一家には一定の生活パターンが出来上がっていたのだが、ある日、母が突然甦る。そこには、手放しでは喜べない各々の事情や思惑があり……。
作・演出/蓬莱竜太
2026年11月7日~12月6日/シアタートラム 大阪、愛知、福岡公演あり。当日券あり。詳細は公演公式サイトまで。
https://www.siscompany.com/hatenai/
取材・文/岡﨑 香 ヘアメーク/新井克英 スタイリスト/申谷弘美 撮影/田中駿伍
ニット¥71,500(SEVENTY VENEZIA)、スカート¥203,500(ICEBERG)/ともにサンフレール03-3265-0251 イヤリング¥27,500、リング¥17,600/ともにagete0800-500-5000

































