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「やりたいことのために、やるべきこともするのが大人」【尾上右近さん・中村隼人さん】お互いに感じる変化

若手人気歌舞伎俳優の尾上右近さんと中村隼人さんが11月の歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」に出演します。上演されるのは歌舞伎三大名作の一つ、通し狂言『仮名手本忠臣蔵』。元禄年間に江戸で起こった赤穂事件を題材に、主君の無念の死を受け、家臣たちが苦難を乗り越えて討入りを果たすまでを全十一段で描いた壮大な人間ドラマです。右近さんと隼人さんは、なかでも人気の高い「五・六段目」で、運命に翻弄される若い夫婦を演じます。年が近く、幼なじみでもあるというお二人に、意気込みやお互いへの思い、最近ハマっているものなどについて伺いました。

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【INDEX】 ★ 互いに尊敬し合い、たくさん刺激をもらっています
★ やりたいことのために、やるべきこともできるのが大人
★ 40代の女性は、歌舞伎のお客さんとしての伸びしろの塊

互いに尊敬し合い、たくさん刺激をもらっています

――通し狂言『仮名手本忠臣蔵』で、駆け落ちをした夫婦の役を演じるお二人。右近さんは女房おかるを、隼人さんは塩冶の家臣・早野勘平を、どなたに習われるのですか?

右近 おかるは(坂東)玉三郎のお兄さんに教えていただく予定です。昼の部のAプログラムでさせていただく塩冶判官様は、師匠である七代目(尾上)菊五郎のおじさまに教えていただきます。

隼人 僕は勘平のお話をいただいた時、すぐに片岡仁左衛門のおじさまにご報告して、教えていただきたいとお願いしました。近年ずっと、おじさまの近くで修行させていただいていることもありますし、おじのさま勘平は、いい意味で江戸と上方の“いいとこ取り”といいますか、役の合理性みたいなものが詰まった、心の動きに無理のない勘平だと僕は感じていまして。なので、音羽屋さんや中村屋さんの型とはまた少し違う型にはなると思うんですが、(勘平を演じたことのある)右近さんにもアドバイスをもらってつとめられたらと思っています。

――幼なじみでもあるというお二人。隼人さんがInstagramにアップなさっていた、右近さんの自主公演「研の會FINAL」を観に行かれた際の写真にも愛を感じました。

右近 あの写真、めちゃくちゃ嬉しかったです。「研の會FINAL」のポスターの前で、一緒に観に来てくれた(中村)莟玉さん、(中村)歌之助さん、(市川)染五郎さん、そして隼人さんの4人で、すごくいい笑顔で写っていて。

隼人 ケンケン(右近さんの愛称)が喜ぶだろうなと思って撮りました(笑)。でも実際、すごい自主公演でしたよね。同世代としてはいろいろなことを思いました。まず、グッズへの力の入れ方が非常に勉強になったし(笑)、明治座で4公演やって満席にするなんて。僕は第1回以降、何回か「研の會」を観てきたんですが、最初はたぶん、挑戦とか勉強会という趣旨が強かったと思うんです。「自分はこの役をやりたい」「いつか歌舞伎座でやりたい」という思いがすごく伝わってきましたし。でも回を追うごとに成熟して自信がついているのがわかって、FINALでは「お客様に届けよう」という気持ちを強く感じました。

右近 嬉しいです。僕は(『春興鏡獅子』の)弥生の引っ込みの時に、客席の隼人さんと目が合って、その瞬間、何かもう、すごく幸せな気持ちになって。

隼人 一瞬だったけど、バッチリ目が合ったよね(笑)。その第1回公演でも踊った『鏡獅子』を最後に持ってくる面白さもあったし、いい意味でマニアックな『藝阿呆』という演目との組み合わせのバランスも面白かった。一人で3題も踊ったケンケンの体力にも驚いたし、義太夫さんや長唄さんといった周りの人たちもみんな素敵で、「ケンケンと歌舞伎が本当に好きな人たちが集まっているんだな」と感じて、僕はそれが嬉しかったですね。

右近 ありがとう。コロナを挟んで、11年かかって10回目を迎えられた自主公演を、心からの感謝の気持ちで締め括ることができて、僕は幸せ者だなと思います。

――本当に圧巻の公演でした。右近さんは、隼人さんのことをどんなふうに見ていらっしゃるのでしょう?

右近 僕はいろいろやりたくなっちゃうタイプで、歌舞伎においては特に、あれもこれもと考えてしまうんですが、隼人さんは路線を定めて、基本的に仁左衛門のおじさまに教えていただこうと決めている。そういう一貫性が僕にはないので、腹の括り方を見習わなくちゃいけないなと、いつも思っています。隼人さんは、いつ頃から仁左衛門のおじさまに習っているの?

隼人 初めて本格的に教えていただいたのは、(2020年の)新春浅草歌舞伎で『寺子屋』の武部源蔵をつとめることになった時。前年にも『義賢最期』の多田蔵人行綱の稽古をつけていただいたんだけれども、たぶんその頃は、おじさまには「(中村)錦之助くんの息子」としてしか認識されていなかったと思う。

ただ僕自身は、ケンケンが言ってくれたようなことを、実はそんなに意識していなくて。自分の家のルーツである中村時蔵は女方の名跡なので、うちの家にはそもそも立役のものが残っていないんです。そんな中で、自分が好きな歌舞伎をどうやったら演じ続けられるだろう?と考えて模索した時に、僕はそんなに器用な人間じゃないので、何かに絞らなきゃいけないなと思った。それが積み重なって、今に至るような感じです。だからケンケンはいろいろなことができて、すごいなと思うよ。

右近 そんなことないよ。

隼人 いやいや、ミュージカルに出たり、映画の吹き替えをやったり、多方面で活躍していてすごいと思う。でもだからこそ、「僕は自分ができないことに挑戦するのではなく、自分ができることをやろう」という思いが湧いてくるし、逆に「じゃあ挑戦してみようかな」という気持ちになったりもする。右近さんから、たくさん刺激をもらっています。

やりたいことのために、やるべきこともできるのが大人

――子どもの頃から親しくされているお二人は、お互いの変化や成長をどう感じていらっしゃいますか?

右近 そうですね……いろいろあるとは思うんですが、隼人さんは変わらない部分のほうが大きい気がします。

隼人 本当? 僕は、ケンケンは大人になったなって、めちゃくちゃ感じてるよ。もちろん子ども心も持っていて、僕はいい意味で、ピーターパンだと思っているけど。

右近 僕がピーターパン!?(笑)

隼人 そう。この間、玉三郎のお兄さんも「主役をつとめる立役は、やっぱりどこか童心じゃなきゃいけない」と話されていたんだけど、ケンケンはそういう意味での童心を持っていると思う。以前は童心すぎたのかもね(笑)。それが今ちょうどいいバランスになっていて、そこにはやっぱり、自主公演を続けてきたことが一つ大きくある気がする……って、何か偉そうだけど(笑)。

右近 確かに“大人になった”は、お互いに思うかもね。なぜなら、自分がやることや役のことを、自ずと客観的に捉えられるようになってきたから。今までとは見え方が違ってきて、自分や相手役のお芝居だけじゃなく、そうすることで何が起こるのかとか、配役や作品全体のことまで考えることが、すごく増えたなという実感があります。その分、自分なりに課題を持って稽古に臨んだり、何度も反芻する中で、いい意味で何かしら“引っかかり”を持つことも増えた気がする。あとはやっぱり、喜びを素直に表現し合えるようになったところに、大人になったことを感じますね。

――そんなお二人が今ハマっているものは何でしょう?

右近 僕はもう圧倒的に『宇宙兄弟』です。配信でアニメを観て、今さらながらにハマっております。ナイツの塙(宣之)さんみたいに「『宇宙兄弟』って知ってます? ものすごく熱くて、すっごく心温まる兄弟の物語があるんですよ」って、みんなに話したい(笑)。それくらい好きです。さっきの童心と大人の話じゃないですけど、『宇宙兄弟』を観ていると、本当の大人は“子どもの時にできたことが、できなくなる”んじゃなくて、“子どもにできて、大人にできないことなんてないでしょ”と言える人なんだなと感じます。やりたいことだけやるのが子どもで、やりたいことのために、やるべきこともできるのが大人。だから大人は、やりたいことが子どもの時よりも増えるんだなって。

隼人 僕は、すごくハマっているわけではないですけど、アウトドアが好きです。キャンプにも行ったりしますし。

右近 え~っ意外!

隼人 だよね(笑)。以前は自然がそんなに好きではなかったんですけれども、今はなるべく生活に取り入れるようにしていて。忙しさとか面倒くささが勝ってしまって、都内にいることも結構多いんですが、この間も友達と何人かで車で箱根に行ったら、すごく気分転換になりました。なので思い切って出掛けて、あえて自然の中に身を置くようにしています。

右近 リフレッシュできそうだね。

隼人 そうそう。家にいると本があるし、都内にいるといろんなものが目に入って次の舞台のことを考えちゃったりするから、何もできないところに行って、あえて何も考えない時間を作るのは、一つの手だなと思っていて。もう一つ、このところ公演で海外に行くことが増えたおかげで、他の文化に触れる楽しさというのも最近感じています。去年はトルコのカッパドキア、サウジアラビアのリヤド、それからニューヨークのカーネギーホールにも立たせていただいて、とてもいい経験になりました。

40代の女性は、歌舞伎のお客さんとしての伸びしろの塊

――素敵ですね。最後に、STORYのメイン読者である40代の女性が、歌舞伎を観に行きたくなるようなメッセージをいただけますでしょうか。

右近 はい。40代の女性は、歌舞伎を観るにあたって、いちばん脂の乗っている皆さんではないかと思います! 同年代や上の年代の役者さんの活躍を見て、「この人頑張ってるな。私も頑張ろう」と思えるし、僕たちや、もっと下の世代の役者を見て、「この子いいな。応援しよう」と思ったら、そこからずっと、それこそ何十年も追いかけることができます。だからもう、お客さんとしての伸びしろの塊です!(笑) ぜひ観にいらしてください!

隼人 僕は、映画『国宝』に絡めてお勧めしたいと思います。『国宝』が好きな方はぜひ来ていただきたいなと。

右近 おお~っ、そうきたか(笑)。

隼人 映画と演目が重なっているわけではないんですが、この11月の公演は、いろいろな家の人が入り混じった配役になっていて、ある意味『国宝』っぽいところがあると思うんです。見応えたっぷりの通し狂言『仮名手本忠臣蔵』、ぜひ足をお運びください!

【プロフィール】 おのえ・うこん/1992年、東京都生まれ。曾祖父は六代目尾上菊五郎、母方の祖父は俳優の鶴田浩二。7歳で歌舞伎座『舞鶴雪月花』にて本名の岡村研佑で初舞台。12歳で新橋演舞場『人情噺文七元結』にて二代目尾上右近を襲名。2018年1月には清元栄寿太夫を襲名する。立役と女方を兼ねる若手花形であり、映像作品やミュージカルなどでも活躍。2026年に読売演劇大賞 杉村春子賞、芸術選奨 文部科学大臣新人賞を受賞。

なかむら・はやと/1993年、東京都生まれ。二代目中村錦之助の長男。祖父は四代目中村時蔵。大叔父に萬屋錦之介。8歳で歌舞伎座『寺子屋』にて初代中村隼人を名乗り初舞台。立役として、古典歌舞伎や新作歌舞伎で存在感を発揮。映像作品でも活躍し、NHK時代劇『大富豪同心』シリーズでは主演をつとめる。昨年はトルコのカッパドキアなど海外でも歌舞伎舞踊を披露し、今秋、PREMIUM JAPAN AWARD 2026個人賞を受賞。

【公演情報】

令和8年11月「吉例顔見世大歌舞伎」
通し狂言『仮名手本忠臣蔵』
2026年11月1日~25日/歌舞伎座
昼の部:11時~/夜の部:16時30分~
休演:9日、17日 貸切(幕見席は営業):14日・昼の部、22日・夜の部

https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/986

取材・文/岡﨑 香 ヘアメーク/Storm <右近さん>、川又由紀 <隼人さん> スタイリスト/三島和也(Tatanca)<右近さん>、石橋修一 <隼人さん> 撮影/田中駿伍

[右近さん] ジャケット¥59,400 パンツ¥33,000 (ともにクルニ/クルニ フラッグシップ ストア) その他スタイリスト私物
[隼人さん] ジャケット¥231,000 シャツ¥56,100 パンツ¥138,600 シューズ¥50,600 ベルト24,200 (すべてY’s for men/ヨウジヤマモト プレスルーム)

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