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松たか子さん、演技に踏み出す瞬間はどんなに準備しても“孤独”。でも、その先にあるものを信じ一歩を――

青春時代に胸をキュンキュンと震わせた「ロングバケーション」に「ラブジェネレーション」に「HERO」、そして経験を重ね大人女性へと成長した30代、40代では「カルテット」「大豆田とわ子と三人の元夫」『ファーストキス 1 ST KISS』……と私たちを夢中にさせる作品に出演し、10代から49歳の今に至るまで、変わらず第一線で活躍する松たか子さん。実際にお会いした松さんは、ドラマや映画の中から伝わるお人柄そのままに、
壁を作らず、明るく朗らかで自然体。そんな松さんが今回挑んだのは、自然豊かな田舎町で一人暮らす大人女性の役どころ。東京生まれ東京育ちの生粋の都会っ子にもかかわらず、撮影のために挑んだ、デコボコな1ヶ月の田舎暮らし裏ストーリーをたっぷりとお聞きしました!

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★ 「私でいいんだろうか――?」生粋の東京っ子だけにそう思った
★ 「孤独を楽しむ――」そんな姿に出会った撮影現場
★ 極寒のコテージで地元の食材を工夫して食べた、過酷で楽しい1ヶ月の合宿生活

「私でいいんだろうか――?」生粋の東京っ子だけにそう思った

今回、初めて深田晃司監督とご一緒したのですが、声をかけていただいた時に、まず、「私でいいんだろうか――?」そう思ったんです。
私は、東京生まれの東京育ち。だから、大自然に包まれた町で暮らす女性を題材にした作品に、単純に「なぜ私が監督のイメージの中にあったんだろう?」と思ったりもして……。でも、深田監督が奈義という町に魅せられて、実際に10ヶ月ほど住み、ずっと温めてきたお話だとお聞きして、「どんな町なんだろう?」とすごく興味が湧いてきたんです。それと共に、監督の思いの深さを感じ、そんなお話の中に入ってみたいなと思って「是非、やらせていただきます」とお返事しました。

「孤独を楽しむ――」そんな姿に出会った撮影現場

© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.

私が演じたのは、そんな町の中で一人、酪農で生計を立てながら彫刻家としても活動する女性。それで、撮影中は、宮城県を拠点にする彫刻家の吉田愛美さんが、ずっと寄り添い指導してくださいました。たびたび目にした吉田さんが彫刻に向かう姿は、まるで、「孤独を楽しんでいる」そんなふうに見えました。創作にまっすぐに向かう時間は「孤独だけれど、どこかテンションが高い」といったふうに。でも、きっと誰にも、そんな“孤独”を感じる瞬間って、ありますよね。自身にとって大切なものや、仕事に真っすぐに向かう瞬間、人は、時折“孤独”を感じるもの。もちろん、私にもそんな瞬間はあります。例えば、舞台に挑む時、どんなに稽古をしても、キレイな衣装を着せてもらっても、結局、舞台への一歩を踏み出すのは自分自身。だから、やっぱりその瞬間は怖いんです。

“孤独”は、怖さを感じる瞬間でもあるけれど、その先に何かがあるのだと信じるしかない。そうしないと、何も始まらないから。
現場を見渡すと、そんなふうに孤独と向き合う姿と間々出会い、その強さに、私自身、パワーをいただいていました。

極寒のコテージで地元の食材を工夫して食べた、過酷で楽しい1ヶ月の合宿生活

© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.

そして、1ヶ月にわたる奈義町での撮影は、私にとって色々な意味で非日常でした。私は普段、お休みもバタバタと家のことをして過ごして、
忙しいことがイヤではないタイプなのですが、奈義での撮影は、映画の中にある日めくりカレンダーが1枚1枚めくられる如くに穏やかで。
雨を降らすシーンや夜のシーンといった大変な場面の撮影以外は、「1日の労働時間にも気をつけながら進めていく」という共通の認識を皆で持って、頑張るところはギュッと頑張るけれど、それ以外では無理がなく、穏やかに進められていきました。

ところが、撮影期間に滞在していたコテージが、もう、大げさなんかじゃなく、凍えるくらいに寒くて……。撮影時期は、3月頭から4月頭にかけての1ヶ月間だったのですが、暖房を30℃にしても、まったく暖かくならないんです。元義理の妹役の石橋静河ちゃんと共にそれぞれコテージが与えられてお隣同士で暮らしていたので、二人で「もう、どうしよう……」って(笑)。とりあえず、できるだけの防寒具を着て、寝る時は置いてある布団を二枚、三枚と重ねて、顔半分だけ出して寝るといった感じでした。コテージにはそれぞれキッチンが付いていたので、
直売所で出会う美味しい野菜や、町の精肉屋さんのお肉……、そんな材料をいかに使うかと考えて、静河ちゃんとお裾分けし合ったり、
お互いに助け合って、工夫しながら過ごしていました。「スープ作ったよ」と静河ちゃんのところに持って行き、すると今度は、静河ちゃんが「これ作りました」と持ってきてくれて(笑)。でも、私にとっては、そんな時間がすごく楽しかったんです。

いつもは家族のために作っていたご飯を、自分のためだけに「何を作ろう」と考えて工夫してみる――、それが、私にとってはすごく贅沢な時間で……。
そうして過ごすうちに、「ちょっと寒さが緩んできたね」「今日は暖かいね」と、だんだんと春の兆しが感じられるようになっていました。
実際、私が演じた「寄子」も、きっと“ナギ”という町で同様に自然の中で工夫をしながら生きてきたはず。それを体感しながら撮影に臨めたことは、
期せずして役づくりにおいても大きかったと思います。「なかなか面白い合宿だね」「もう、修行だね!」と言い合いながら暮らした楽しくも過酷な日々は、今や良き思い出です。

Takako Matsu 1977 年 6 ⽉ 10 ⽇⽣まれ、東京都出⾝。93 年に歌舞伎座「⼈情噺⽂七元結」で初舞台を踏む。94 年に⼤河ドラマ「花の乱」(NHK)で TVドラマに初出演。97 年に『東京⽇和』(⽵中直⼈監督)で映画デビュー。同年「明⽇、春がきたら」で歌⼿デビュー。98 年には『四⽉物語』(岩井俊⼆監督)で映画初主演を飾る。2009 年には『ヴィヨンの妻 〜桜桃とタンポポ〜』(根岸吉太郎監督)で第33回⽇本アカデミー賞最優秀主演⼥優賞を受賞。14 年ディズニー映画『アナと雪の⼥王』、19 年『アナと雪の⼥王 2』の⽇本語吹き替え版・エルサ役と劇中歌を担当。TVドラマ「⼤⾖⽥とわ⼦と三⼈の元夫」(21/フジテレビ)や舞台「パ・ラパパンパン」(松尾スズキ演出)、NODA・MAP「Q: A Night At The Kabuki」(野⽥秀樹作・演出)と話題作にも数多く出演。主な映画出演作品に『告⽩』(10/中島哲也監督)、『夢売るふたり』(12/⻄川美和監督)、『⼩さいおうち』(14/⼭⽥洋次監督)、『泣き⾍しょったんの奇跡』(18/豊⽥利晃監督)、『来る』(18/中島哲也監督)、『マスカレード・ホテル』(19/鈴⽊雅之監督)、『ラストレター』(20/岩井俊⼆監督)、『峠 最後のサムライ』(22/⼩泉堯史監督)、『⼟を喰らう⼗⼆ヵ⽉』(22/中江裕司監督)、『ファーストキス 1ST KISS』(25/塚原あゆ⼦監督)、『夏の砂の上』(25/⽟⽥真也監督)などがある。

今回、松たか子さんが出演した映画は……

© 2026 ナギダイアリー・パートナーズ (スターサンズ/八朔ラボ/ワンダーストラック) / Survivance / Momo Film Co.

『ナギダイアリー』
監督:深田晃司
出演:松たか子、石橋静河
川口和空、藤原聖、藤間爽子、水間ロン、申瑞季
松山ケンイチ

近くの⼭から切り出される⽊でひとり彫刻を作る寄⼦(松たか⼦)。 ある⽇、東京と台湾で建築家として活躍してきた友梨(⽯橋静河)は、 数⽇間の休暇をとって、別れた夫の姉・寄⼦のもとを訪れる。都会にはない「ナギ」での穏やかな⽣活。妻を亡くした寄⼦の幼なじみの好浩(松⼭ケンイチ)、そして息⼦の春樹(川⼝和空)とその親友の圭太(藤原聖)⼈々との出会いは、⽇常に⼩さな揺らぎをもたらしていく。やがて、彫刻のモデルを毎晩つとめるなかで寄⼦の知られざる喪失に触れ、友梨にも変化が起きていく。9月25日(金)より新宿ピカデリー、ユーロスペース ほか全国ロードショー

撮影/田頭拓人 取材・構成/河合由樹

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